cinema eye

『激流』

鑑賞日96/4/14(ビデオ)
 昨年話題になったメリル・ストリープの川下りアドベンチャー映画。あの都会的で繊細な演技派女優が、太い二の腕むき出しでオールを操り激流を下り悪漢と対決するというイメージチェンジに挑戦しましたが、結果はまあまあ、というところかと。

 ストーリーはもうご存じの方も多いと思いますが、もともと川下りのガイドをしていたメリル・ストリープが、久しぶりに家族3人で故郷の川下りをします。そこに現れたのが、強盗をして逃亡中のケビン・ベーコンら。最初はいい人ぶっていた彼らも途中で本性を現し、メリル・ストリープは、彼らの逃亡の手助けのために、とんでもない激流に挑まなければならなくなる・・・というお話です。強盗との対決に加え現代のアメリカ映画らしく仕事中毒の夫との確執も織り込まれ、全編メリル・ストリープが縦横無尽の大活躍です。

 アクション映画として見た場合、メリル・ストリープはまあまあ良くやっている、というところですね。激流を下るシーンの迫力はさすがに十分で、こういう映画は絶対日本じゃ作れないだろうと思いますが、それ以外の部分のアクションは、いまひとつというところです。悪くはないんですが、最近のアクション映画を見慣れた目には、ちょいと大人しめ、と言った感じ。まあ激流のアクションだけで十分堪能はできますけどね。

 夫との確執を含めた家族の再生をテーマにした映画、という視点で見た場合は、さすが演技派女優の面目躍如という感じです。最初軽蔑に近い視線を投げかけられていた夫が、どんどん格好良くなっていって、ラストで家族のヒーローになるあたりも痛快ですし、感動的です。しかし、それだけではいつものメリル・ストリープの映画になってしまうわけで、やはり激流アクションあってこその映画であることには違いありませんから、そういう意味では一粒で二度美味しい的なところもあるお買い得な映画と言えるかもしれません。

 ちょっと残念だったのは、悪役のケビン・ベーコン。最初いかにも好青年で出てきてだんだん本性を現していくわけですが、どうもその変化の具合がうまくいってないというか、最後まで、どっかこいつ本当はいい奴じゃないの、という感じが残ってしまっているんですよ。これはそういう演出の狙いだったのかもしれませんが、僕の個人的趣味から言えば、最初の好青年風とのギャップを思いっきり打ち出して、徹底的に悪い奴を凄みをもって演じて欲しかったですね。この手の映画は悪役がきちんと決めてくれないと面白くないんだから。

  今回の木戸銭…1300円