cinema eye

『エネミー・オブ・アメリカ』

鑑賞日00/4/13(ビデオ)
 日本でも盗聴法案が通っていよいよ他人事ではなくなってきた政府によるプライバシーの侵害問題。この映画は、アメリカにおける法案成立を巡って殺人事件が起き、それに巻き込まれた弁護士がNSAと戦うことになります。プライバシーと公共の安全を計りにかけて、どちらを取るかという選択を迫るちょっと社会派なサスペンス映画です。

 と言っても、そこはハリウッド映画。正面から描けば暗く重いテーマであるにも関わらず、徹底してエンターテイメントに徹していて、最後まで見る者を飽きさせません。ぐいぐいとストーリーを引っ張っていく手腕は、監督と脚本の才能でしょうか。伏線の張り方も、作品中に登場する監視カメラの使い方もなかなかうまいと思います。

 役者では主役のウィル・スミスも奮闘していますが、彼を助けるジーン・ハックマンが、なかなか美味しい役どころです。冷徹なプロの仕事師のはずが、実は熱いハートを持っている気の優しい爺さんを演じていい味を出しています。娯楽痛快作でありながら、きちんと社会的なメッセージを届けるというと優等生的ですが、いかにもハリウッドの良心が生きていて心地よい映画でした。

今回の木戸銭…1400円