cinema eye

『イースト・ミーツ・ウェスト』

鑑賞日96/8/20(ビデオ)
 異文化が出会うときには必ず摩擦が生まれ、そこにドラマができます。とりわけ西洋文化と東洋文化の出会いは、ドラマの宝庫と言ってもいいでしょう。この映画もタイトルからしてわかるように東洋と西洋の出会いがテーマ。しかも時代は1860年代のアメリカ西部。大いなる誤解と錯覚からさまざまなドラマが・・・と思ったら、これがちょっと違いました。

 主人公は、水戸脱藩浪士の真田広之と元お庭番竹中直人。咸臨丸に乗ってアメリカにやってきた2人は、銀行に預けた幕府の公金3000両を強盗団に奪われる。2人はそれを取り返すため、そしてそれぞれの目的のために大西部に飛び込んだ。真田は強盗団に父親を殺された子供と、竹中はインディアン(本当はネイティブ・アメリカンと言うべきでしょうが)の娘とそれぞれ旅を始める。。。

 と言うことで、いかにも楽しく面白くなりそうな設定ですが、ここに岡本喜八監督はあえて異文化激突ドラマを持ち込まず、いとも素直にアメリカ西部に2人を溶け込ませていきます。監督の目的は、ドラマよりも西部劇と時代劇の融合したアクション映画。真田も竹中も大いに走る、飛ぶ、馬で駆ける。考えてみれば銃と剣の違いはあれ、荒唐無稽の殺し合いという意味では、洋の東西はありません。難しい理屈や辻褄合わせをせずに、ひたすら小気味よい演出で映画はどんどん進みます。

 異文化が摩擦を起こすのではなく、異文化が組合わさることで、さらにパワーアップする、いかにもの冒険大活劇。岡本喜八健在を示す快作だと思います。まあ最近のアメリカ映画を見慣れた目には、ちょっと予算が足りないのか全体にチープだし、あまり深みも感じられないけれど、豪華スターを組み合わせた同種の映画『レッドサン』(古い映画だなぁ)よりは、軽さがあってそれなりに差別化はできたかな、という印象です。

  今回の木戸銭…1100円