cinema eye

『ドク・ハリウッド』

鑑賞日91/10/5(劇場)
 マイケル・J・フォックスの新作コメディ『ドク・ハリウッド』。粗筋はご存じの通り、マイケル扮する外科医がハリウッドでのリッチな生活を夢見て移動中に田舎町に迷い込み、その町の暖かな人々と出会い、都会暮らしか田舎かの選択を迫られる、という内容です。

 話自体は取り立ててどうこういう程のこともなく、結末は大体予想通りになるのですが、マイケルのコメディ・センスが遺憾なく発揮され、『摩天楼はバラ色に』には及ばないものの楽しい作品に仕上がっています。「ああ、アメリカの田舎町ってこういう風なんだろうなぁ」て感じさせるエピソードがゴロゴロしていて、とてもホンワカと暖かい気分になれるところがミソですね。

 僕としては、この作品うんぬんよりも、こういう傾向の作品が多く生まれるようになった最近のアメリカ文化・アメリカ人の志向というものに興味がいきます。つまり『ダンス・ウィズ・ウルブズ』なんかに代表される自然志向というか、科学文明絶対思想への反動というか、ナチュラルなものへの憧れが非常に強くなってきているのが最近のアメリカ映画を見ていると感じます。

 この『ドク・ハリウッド』だって今までならハリウッドで成功するために頑張る医者の物語になっていたろうに、事もあろうに憧れのビバリー・ヒルズ・ライフを捨てて田舎町に戻るというんだから、ただ事ではありません。そんな話、少し前なら絶対に企画段階でボツだったでしょうね。  それだけアメリカ人はいま都会の生活に疲れているのかなぁ、と思うのです。で、何でもアメリカ文化の後を追ってきた日本人のこと、これからはやっぱり田舎がトレンドになりまっせぇ。みなさん、東京捨てなはれ。

今回の木戸銭…800円