cinema eye

『僕らはみんな生きている』

鑑賞日93/9/16(ビデオ)
 日本映画の希望の星、話題の一色=滝田コンビによる『僕らはみんな生きている』をビデオで見ました。この原作がスピリッツで連載されている頃から注目していた作品ですし、好きな俳優である真田広之が出ているので、かなり期待をしていましたが、それに応えるだけの仕上がりと言えると思います。

 なんと言っても、やはりジャパニーズ・ビジネスマンの誇りと悲哀と滑稽さと愛しさ、そういう諸々の感情を見事に描ききった脚本と演出が素晴らしい。早見優が特別出演する以外は、とにかく男ばかりが出てきて男の仕事が女にわかるか、と叫び続ける映画です。それをバカな奴らだと笑うのは簡単なのですが、でも彼らとて必ずしも好きでそんな人間になってしまったのではない、と言ってそういう自分が決して嫌いでもない、そのへんの微妙な感情がうまく描かれていて、僕のような堕落した怠惰なサラリーマンですら彼らに同情と共感を感じてしまいます。

 いつも好演する真田広之ですが、今回は周りの役者がうまくて、少々食われてしまったような気がします。特に海千山千の商社マンとして対決する山崎努と岸部一徳がいいです。タイプは違えど、こうして日本のビジネスマンは頑張っているんだなぁ、とつくづくその苦労を偲ばせるような熱演でした。

 原作では現地運転手でゲリラのセーラは、若くて綺麗な女性だったのですが、映画では男性になっています。最初かなり違和感があったのですが、原作と違いわずか2時間の映画の中では、セーラとの恋愛まで描いていては、とても冗長になるだけだったろうから、思い切って男にしてテーマを絞ったのだと思います。それはそれで正解でしょうが、原作のセーラが魅力的なキャラクターだっただけに、ちょっと残念です。

 それにしても日本映画もなかなかやるじゃないか、と改めて感心させてくれる作品です。同じコンビの「病院へ行こう」シリーズと併せて、邦画嫌いの方もご覧ください(笑)。

今回の木戸銭…1300円