cinema eye
鑑賞日91/7/12(劇場)
話題を呼んでいる作品でしたが、確かに面白い映画ではありましたが、ちょっと絶賛とはいかないな、という印象を受けました。
この映画、基本的にはパニック・サスペンスなんですよね。なんたって見せ物はジョージ・ルーカスが主宰するSFX工房が総力を挙げて取り組んだという火災シーン。消防士が爆風で吹き飛ばされたり、ビルの屋上で屋根が落ちる中を逃げまどったりというシーンをはじめ、とにかく「生きている火」を見事に迫力ある絵でこれでもか、とばかりに見せてくれて、これだけでも十分満足できます。
さらにデ・ニーロ演じるシブイ火災調査官が活躍する陰謀を暴くサスペンス、カート・ラッセルとウイリアム・ボールドウィン兄弟の葛藤と愛、消防士仲間の友情、家族の絆など、盛りだくさんの内容をロン・ハワードが手際良くまとめています。
ただ、盛りだくさんな内容を上手にまとめているだけで、「まとまり過ぎ」な感じは否めません。はっきり言って火災シーン以外はどれも中途半端。サスペンスに絞るなら絞る、兄弟愛に焦点を合わせるなら合わせるでもう少し内容を絞り込んでくれないと、見ている方にはあれもこれもあったけど、じゃあ、この映画はなんだったのか、というと火災のSFXが凄かった、にしかならないんじゃないかな?
スティーブの離婚した妻と子とのシーンなんてカットしてもいいと思うし、ブライアンと議員秘書の恋愛ももっと簡単にしたほうが良い。何も消防車の上でのメイクラブをそう丹念に描く必要はないと思うんですよね。余計なエピソードを削っていけば、もっとスッキリとした映画になったろうに、と思います。
エンタテインメントはエピソードが面白くなければなりませんが、饒舌過ぎるのもせっかくの主筋を殺してしまいます。そういう意味で惜しかった、と思う映画でした。
今回の木戸銭…1000円