cinema eye

『ザ・エージェント』

鑑賞日98/3/3(ビデオ)
 『ザ・ファーム』に続くトム・クルーズ主演の職業シリーズ。今回は今やアメリカでビッグビジネスと成っているスポーツエージェントにトム・クルーズが扮して、ヒューマン&ラブストーリーをテンポ良く演じています。日本ではまだダン野村くらいしか目立ったスポーツエージェントはいませんが、アメリカではその競争の激しさが良くわかる映画となっています。

 ストーリーは大手のスポーツ・エージェントに属して金儲け第一主義で奔走するトム・クルーズが、ある夜に啓示を受けて突如人間愛と職業倫理に目覚めます。彼はクライアントの数を減らして選手のために誠心誠意仕事をするよう会社に提案して即刻解雇。その時彼に一緒についてきた経理の子持ちバツイチ女性とともに、たった1人のクライアントであるアメフト選手のエージェントとなって頑張る、というストーリーです。まあどっちかと言うと、サスペンス色の強かった『ザ・ファーム』よりもグッとくだけていて、マイケル・J・フォックスの映画に近いノリですね。

 ただコメディ色はそれほど強くありません。それよりも、もう主人公は35才なんですが、イメージとしては青春映画っぽいですね。理想主義の主人公が現実と戦いながら恋人と親友の協力で勝利する、という基本設定は、青春映画には良くある黄金パターンでしょう。そういう意味では、この映画は陳腐であると同時に、安心して見ていられる映画であるとも言えます。

 残念なのは、前半のストーリー展開がバタバタとしていて、どうもまとまりと落ち着きがないところ。ストーリーを消化するのに手一杯で、映画としての膨らみが足りない感じなのです。面白いのは主人公の恋人の姉が「離婚した女の会」を自宅で開いていることくらいで、後はひたすらストーリーを追っています。そのために映画全体が平板な印象で、大きな盛り上がりに欠けるまま終わってしまいます。もう少し前半を整理して後半の山場をきちんと作れば、面白くなったと思います。題材は面白かっただけに惜しい映画でした。

今回の木戸銭…700円