cinema eye

『7月7日、晴れ』

鑑賞日96/5/29(劇場)
 フジテレビが作った、例によってTVの2時間ドラマのような映画です。あまり期待せずに見に行ったのですが、期待していなかった割には面白かったので、お買得でした。もっとも招待券を貰ったから見たのですから買ってはいないんだけど。

 ストーリーは『ローマの休日』パターンです。現代日本版ですから、もちろん王女様は登場しませんが、代わりに海外を拠点に活躍する国際的スター歌手望月ひなた(観月ありさ)が登場します。彼女のことを全然知らなかった自動車会社のサラリーマンでアウトドア趣味の山部健太(萩原聖人)と出会って付き合って別れて再会する物語です。身分違いの男女の交際、ラストに建前を捨てて本音を語る女心、まさに『ローマの休日』を彷彿とさせて、なかなかファンタジックかつロマンチックです。「んなことあるかっ!」と突っ込みを入れたくなるようなシーンもないではないですが、観月ありさがなかなか魅力的ですし、全編に流れるドリカムメロディも悪くないし、現代日本の風俗をよく捉えていて、まあそれに免じて許しましょう、という感じです。そうそう、つまらないチョイ役で有名スターが登場するような、いかにもフジテレビ的な小技をやらないで、結構真面目に作っているところにも好感が持てました。脇役の伊武雅人、うじきつよし、田中律子あたりも良かったし。

 ただ、いかにも広告代理店とテレビ局が組んで作っているよな、というあざとさも散見されます。ストーリーの大事な核となる新しいRV車は先日発売されたトヨタの「イプサム」そのままですし、主人公たちのアウトドア趣味も、いかにも現代のトレンドですよ、って感じでそれっぽい。このあたりの手法は、ホイチョイプロの『私をスキーに〜』『彼女が水着に〜』などのシリーズと同じでして、あまり新しさはないです。これに全編に流れるドリカムメロディがダメ押しで、ユーミン・サザンと並ぶような位置にドリカムが立ったんだな、ということだけはよくわかりましたがね。

 つまり、広告代理店的仕掛けに乗せられて気持ち良い層には、結構楽しめる映画だし、そういう裏をすぐに見てとり拒否反応を抱いてしまう層には、実にくだらない映画でしょう。典型的ミーハー受けのアイドル映画ですが、それにしては良かった、というところが正直な感想です。

今回の木戸銭…900円