cinema eye

『119』

鑑賞日95/9/12(ビデオ)
 鬼才竹中直人が監督した去年話題の日本映画。赤井英和に鈴木京香というTVドラマのような配役ながら、実に淡々とした映画らしい世界を作っています。

 物語というほどの物語はなく、海辺の田舎町に東京から美人の大学院生・鈴木京香がやってきます。この火事もない町で退屈していた消防団員たち(赤井英和・竹中直人ら)にとっては、これは久々の大事件。彼らと美女との淡い交流と別れが描かれます。

 とにかく監督の才能ですね、この映画は。主役2人は頑張ったな、という程度。赤井はいつまでたっても『どついたるねん』を超えられません。鈴木は熱演していて、なかなか役柄に相応しい演技をしていますが、存在感がもうひとつ。監督である竹中がよくこの2人をサポートした演技をしています。そして監督・竹中の独特の淡味が出てきています。赤井はこなしきっていないような気もしましたが。

 映画の雰囲気としては、小津の映画に近いのかも知れません。小津の映画をちゃんと見ているわけではないので、曖昧な言い方になってしまいますが、そう思わせる日本的な落ち着きと淡い色合いを感じました。惜しいのは、演出だけじゃなく、映像にもこだわってくれれば、素敵な作品になったと思うのですが、ちょっと絵がいまいちでしたね。せっかく『バタアシ金魚』の松岡錠司が友情出演しているのだから(他にも周防正行とか真田広之・大塚寧々などが出ていました)、『バタアシ金魚』のあの映像テクニックでも教えてもらえば良かったのに、と思いました。決して悪いわけじゃないのですが、せっかく日本の田舎町を舞台にするなら、もっとできたはずだ、と思うのです。

 総合点はそれほど高くはなりませんが、それらしい日本映画を見たいのなら結構いけるかも知れません。僕は好きでした。



今回の木戸銭…900円