cinema eye

『007 ゴールデンアイ』

鑑賞日97/3/19(ビデオ)
 東西冷戦終了後、いったいスパイ達はどういう末路をたどったのかちょっと興味のあるところですが、こちらジェームズ・ボンドもかなり苦戦しているようです。

 去年公開された007シリーズ最新作は、主演をピアース・ブロスナンに代えてのリフレッシュオープンでしたが、時代の逆風をまともに受けてしまったカタチで、どうやってもアナクロにしか過ぎませんでした。もちろん製作者側も十分そのあたりの認識はあるようで、随所にかつての007を皮肉るようなギャグがあるのですが、本家が本家を揶揄してもやはり寂しいだけですね。スパイにとっては生きにくい時代、そしてスパイ映画にとっては存在を危ぶまれるような時代を迎えたのだな、と感じました。

 主演のピアース・ブロスナンは無難にこなしていますが、それだけですね。臭みはなくなりましたが、ちょっと去勢されてしまったような感じにも受けとれます。アクションとお色気が売りの映画なのに、アクションは『ダイ・ハード』などに及びませんし、特撮もまるで一昔前の怪獣映画を見ているかのような稚拙さで、とても『インデペンデンス・デイ』には かないません。Qの作る新兵器の活躍シーンも少なく、ボンドカーはBMWに変わり、しかもほとんど出番なし。Mもなんと女性に変わり、007は今やリストラ寸前です。

 あげくにお色気(死語ですね)も、時代の流れか女性を意識したか、昔のように片っ端からボンドガールとできてしまうわけでもなく、かなり抑え気味。やたらとコンピュータが出てくるのは、最近の犯罪映画の常套手段ですが007は全くコンピュータに手が出せないのも、リストラ間際のオジサンを感じさせて寂しくなります。

 とにかく全体に007シリーズの荒唐無稽さを中途半端にリアルにしてしまった感じで、これでは何のための007シリーズかわかりません。次回作があるのかないのかわかりませんが、もしやるならいっそファンタジーにでもしてしまったらどうでしょうね。

  今回の木戸銭…900円