ビールの業界情報 1996年10月〜1997年2月
1997-1-28日経。「キリンドラフト」と「キリン自由時間のビール」を昨年いっぱいで生産・出荷を打ち切り。売れ筋商品への集中化を進める。
1997-2-11日経。「大地と水の恵み」の販売を2月出荷分を最後に打ち切る。近く新製品を投入。
1997-2-4日経。上海、北京、広州、大連にアサヒから営業責任者を派遣、伊藤忠が現地で計40人の中国人営業マンを採用。アサヒと伊藤忠は北京ビール煙台ビール(山東省)、杭州ビール、泉州ビール、嘉興ビールの5社を買収、「朝日ビール」を生産中。96年約150万ケースを販売。
1997-2-4日経。サッポロはオーストラリアのアデレード大学とビール大麦を開発する。アデレード大学は普及品種「スクーナ」を開発した実績を持つが、「スクーナ」はサッポロが国内で開発した優良品種「はるな二条」に比べ、ビール造りの決め手となるエキスの量、でんぷんを糖に分解する酵素力が劣る。
一方、新品種の開発に先立ち、既存の優良品種「フランクリン」をサウスオーストラリア、ビクトリア両州で集荷。販売を担っているオーストラリア・バーリー・ボードと契約栽培を始める。
1997-2-6日経。3/6発売。価格は260円と一般のビールより70円安い。スーパーホップスは昨年1千万ケースを発売、依然好調で今年は大瓶の200万ケースを含め前年比50%増の1500万ケースをめざす。
1997-1-21日経。ビール大手各社は工場新設に伴い系列の枠を超えて製造設備を発注し始めている。同業界は系列内消費で販売量を下支えする事が多く、かつてアサヒビールが再建のため住友系企業がこぞって「スーパードライ」の愛飲活動を展開したといわれるなど、メーカーと系列企業の結び付きは強い。しかし、販売競争が激化、各社はコストダウンが急務で系列を優先できなくなった。三菱系のキリンはこれまでタンクのほとんどが三菱重工製だったが、5月稼働の神戸工場は住友系の中堅造船であるサノヤス・ヒシノ明昌に発注。住友系のアサヒは、98年稼働の四国工場で地元企業の設備を導入する。サッポロは従来メーンバンクが同じ富士銀行の大成建設に発注していたが、98年着工の新工場(大分県日田市)の設計・施工は地元業者を中心にする。サッポロは九州でのシェアは10%弱で伸び悩んでおり、地域と密着することで需要拡大を狙う。
1997-1-15日経。ビール各社はウィルス病に抵抗力を持つビール大麦の新品種を相次いで開発、国内で契約栽培に乗り出した。国産大麦には「縞委縮病」と呼ばれる病気が蔓延しており、収穫量・品質の低下が深刻化している。96年の国産麦芽の原料比率は各社合計で10%弱と低いが、農家と契約栽培し、ビールのシェアに応じて購入。ところが96年の収穫量は13万tだが実際の収穫は9万7千tにとどまっている。キリンは「きぬか二条」を開発98年から本格的に契約栽培。「きむか二条」は病気への抵抗力だけでなくビールの味わいの決め手となるエキス分も83.2%と従来品種「あまぎ二条」より約2%多い。アサヒは「おうみゆたか」を開発。試験栽培、醸造実験を経て2000年から本格栽培する。サッポロは「みょうぎ二条」を開発。従来の「はるな二条」に代え97から98年にかけて普及させる。
1997-1-8日経。アサヒは前年比14%増と強気。キリンなど3社は主力商品の刷新、販促活動の重点変更などで巻き返しをめざす。市場全体では前年比1ー2%の微増にとどまるとみており、激しいシェア争いが繰り広げられそう。
- キリンビール(佐藤安弘社長)
「ラガー」に次ぐ第2ブランドの「一番搾り」の」強化。昨年は7対3でラガーに注力したが、今年は半々に。「北海道、南九州など一番搾りが強い地域で無理にラガーを販促するような営業はしない」と、地域に合わせた戦略。
- アサヒビール(瀬戸雄三社長)
「スーパードライ」重視を続ける。「スーパードライ」で1億6700万ケースと、初めてラガーを上回る計画。
- サッポロビール(枝元賢造社長)
「黒ラベル」の中身とデザインを1月より刷新。同商品だけで前年比5%増を狙う。「社運をかけた改革で必要ならば販促宣伝費に上限はもうけない」と社長。
- サントリー
「モルツ」にビールの味わいの決め手となる泡持ちを良くする新技術を導入。同商品だけで6%増の計画。
97年のビール4社の出荷計画(万ケース、カッコ内は前年比増加率%)
社名 | 出荷数量 | 発泡酒 |
キリンビール | 25870( 2%) | ー |
アサヒビール | 19000(14%) | ー |
サッポロビール | 9720( 4%) | 1300(15%) |
サントリー | 3020(10%) | 1519(50%) |
1996-12-19日経。1996年1〜10月の輸入実績は前年同期比31.7%減の16万6088キロリットル。1993年にダイエーがベルギーの「バーゲンブロー」を120円で発売し低価格輸入ビールブームの火付け役となったが前年比36.2%減と大幅に落ち込む見通し。
それに対し、国内メーカーが手がける外国ビールの販売は伸び続けている。「バドワイザー」(キリンビール出資のバドワイザー・ジャパン)は前年比17%増、「カールスバーグ」(サントリー)は13%増。ギネス(サッポロ)が25%増。「価格」より「ブランド」重視へ。
- キリンビール
- バドワイザー 677万ケース(17%増)
- ハイネケン 188 (30%増)
- アサヒビール
- ミラースペシャル 33万ケース(13%増)
- バス・ペールエール 2 (57%増)
- レーベンブロイ 17 ( 0%)
- サッポロビール
- サントリー
1996-12-28日経。アサヒビールは97年夏のビール需要期に向け、約285億円を投じ5工場の設備を増強する。アサヒの容器別構成比は缶53%、瓶34%、樽13%の見通し。
- 北海道工場:ビールから生きた酵母を除去する濾過設備を刷新。
- 福島工場:缶ビールのラインを一系列新設。旧式缶ビールラインを改良、高速化。
- 名古屋工場:缶ビールのラインを一系列新設。三菱重工製のラインで毎分2000缶の世界最高速。樽詰め増強。
- 茨城工場:缶ビールのラインを一系列新設。旧式缶ビールラインを改良、高速化。樽詰め増強。麦芽とコーンスターチなどの原料を混合煮沸する仕込み釜1基、発酵タンク12基、貯酒タンク30基を増強。
- 西宮工場:西宮で旧式缶ビールラインを改良、高速化。
- 博多工場:缶ビールのラインを一系列新設。濾過設備を刷新。
1997-1月下旬全国発売。味劣化の原因となる酸化を防ぐ新技術導入などで、爽快なのど越しを追求したという。瓶、缶のデザインはサッポロの星マークを大きく配置した。
1996-12-26日経。車体架送会社の日本フルハーフ販売(横浜市、北条義之社長)と共同で夏でも社内を摂氏25ー28℃に維持する10tトラックを開発。日産ディーゼル工業といすず自動車製トラックに東芝製車載クーラーを取り付け強化プラスチックの断熱材を貨物室内に張り巡らした。これにより盛夏対策を兼ね高温による品質劣化を防ぐ。97年には6工場で樽詰め生ビール用冷蔵庫を増設。工場からの出荷時刻も夏場は従来より2時間早い午前5時に繰り上げる。
1996-12-26日経。1995年の世界主要国のビール消費は前年比約2.5%増の約1億2057万キロリットル。中国やブラジルの増加が目立つ。日本やアメリカは伸び悩み。
- (1)アメリカ 2193.7万キロリットル(▲ 1.2%)
- (2)中 国 1540.0 ( 11.0 )
- (3)ドイツ 1124.0 (▲ 0.7 )
- (6)ブラジル 727.6 ( 24.4 )
- (4)日 本 699.7 (▲ 6.1 )
- (5)英 国 600.5 ( 1.1 )
- (7)メキシコ 407.9 (▲ 4.4 )
- (8)スペイン 268.7 ( 0.9 )
- (10)南アフリカ 240.1 ( 3.5 )
- (9)ロシア 232.3 (▲ 0.8 )
1996-12-19日経。キリンビールとサッポロビールは97年4月の消費税率引き上げを機にビール価格を内税から外税方式に変更する。アサヒビールも検討中。会計処理を簡素化したいという卸、小売店の声に配慮したもの。現在350ml缶の希望価格は225円だが、改訂後の希望小売価格は消費税を除いた本体価格の約218円とする。・・・ひどい話だ!これでは明らかに酒税(45%)にも消費税5%がかかることになる。
1997-2-5日経。キリンビールは4月の消費税引き上げに伴うビールの希望小売価格を発表。内税から外税へ転換で生じる1円未満の端数は四捨五入で処理する。
品目 | 新価格 | 現行価格 |
大 瓶 | 316 | 330 |
中 瓶 | 267 | 280 |
小 瓶 | 189 | 200 |
350ml缶 | 218 | 225 |
500ml缶 | 286 | 295 |
ビール業界ではサッポロビールが「安売り防止のため希望価格の発表を止める」(枝元賢造社長)としているが、他社はいずれも公表する方針。サッポロに対しては「流通会社から価格を明示してほしいとの要請が相次いだ」ため何らかの形で小売価格を示す模様。国産ビールの安売りは94年の酒税引き上げをきっかけに広がった経緯があるが、酒類ディスカウント店の河内屋酒販の樋口行雄社長は「今後は外税となるので、各社とも希望小売価格からの値引率の表示がしやすくなる」と、値引き競争拡大の可能性を指摘している。
1996-12-20日経。サッポロビールは同社商品で最高価格の樽詰め生ビール「エーデルピルス樽生」の発売を97年1月29日から全国に拡大する。これまでは都内のサッポロビールライオンを中心に試験的に販売してきた。
1996-12-4日経。アサヒビールは97年から季節限定ビール(収穫祭、江戸前春生・夏生・冬生)を打ち切る。キリンビールも「春咲き生」を見送り。他の季節限定の「ビール工場」「秋味」「冬仕立て」をどうするかは今後検討する。
一方サントリーは97年も「春一番生ビール」を1月16日から発売。サントリーは「ビール市場は多様化がすすみ、季節商品(春一番、夕涼み、秋が香るビール、鍋の季節の生ビール)も消費者の支持を得ている」と販売を続ける方針。
サッポロビールも販売を続ける方針(春がきた、夏の海岸物語、冬物語)
広東省珠海市に台湾の食品メーカー統一企業公司と合弁会社「珠海麒麟統一ビール」を設立。ブランドは今年5月からシン陽華潤雪花ビール(遼寧省シン陽市)が製造している「キリンビール」。キリンはシン陽ビールが中国北部、珠海麒麟統一ビールが南部に供給する体制。
1996-11-20日経。昨年資本参加した北京ビールの経営テコ入れに乗り出す。
1996-11-19日経。新会社は銀河高原ビール(03-3239-0018)で資本金1億5千万円を全額出資。社長中村功。既に1996-4に岩手県沢内村で地ビール製造開始。年間1500キロリットルの生産能力だが来年1月には3500キロリットルに引き上げる。また、来年5月に岐阜県高山市、熊本県阿蘇地区、同十月には栃木県那須町に開設。更に徳島県剣山地区、北海道真狩村にも建設を予定。新工場はいずれも5000キロリットル。通常地ビールは100〜200キロリットルが多いが、中村社長は「顧客の手応えがよく、大量生産しても十分さばける」。また工場と並行してビアレストランの展開も進める。既に盛岡、東京、宇都宮など6店舗を開設済み。今年9月には東京・六本木に都心型の実験店として「銀河倶楽部」(約165平方メートル,88席)を開店。10月14日には東京・赤坂にFC1号店(約116平方メートル,53席)をオープンし,11月中旬には東京・八重洲,さらに年内に2店ほどを相次ぎFC店として出店する計画今後フランチャイズチェーン方式で人口60万以上の都市に出店予定。
「銀河高原ビール」は名水を原料とし,加熱処理やフィルターろ過もしないため,酵母が生きたままで,独特の甘みと苦みがあるのが特徴。
1996-11-13 日本経済新聞。サントリーはビールの味わいの決め手となる「泡持ち」を良くする、言い換えると泡の量を増やし持続時間を延ばす技術を開発、特許申請。泡持ちを悪くするたんぱく分解酵素「プロテアーゼ」、よくする「泡たんぱく」の濃度をそれぞれ精密に測定する技術を確立し、濃度を最適にコントロールするシステムを作った。「モルツ」などに導入。
1996-11-8 日本経済新聞。1995年2月にサントリーが新発売した新モルツのラベルが、サッポロビールの黒ラベルのデザインに酷似しているとしてサッポロ側が不正競争防止法、商法違反を根拠に販売差し止めの仮処分を求め提訴し、サントリー側もサッポロビールの主張は事実無根で自社に対する抗議文の送付が営業誹謗にあたるとして逆提訴していた。両社の主張は平行線をたどり、訴訟は膠着状態となっていたが東京地裁が和解をもとめたことがきっかけとなり、双方が訴えを取り下げることで合意した。今年1〜9月のサッポロのシェアは17.1%、サントリーは5.0%と精細を欠いている。両社の競争の中心は発泡酒に移ってきている。:キリンとアサヒのはげしいトップブランド争いの陰でサッポロとサントリーは空しい争いをしていた。お互いに無駄な時間と金を使ったと思う。両社の現在の苦悩を如実に反映している。
1996-10-16 日本経済新聞。ビール5社が賞味期限を表示。キリンは淡色ビールと黒ビールに9ケ月、スタウトに12ケ月とした。