ねこさまQ&A

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目次

〈1〉ネコの本能と習性
狩猟本能、運動能力、習性、睡眠など

〈2〉ネコの不思議な行動
予知的行動、自傷行動、過剰反応、貯食本能、帰巣本能など

〈3〉ネコと飼い主のコミュニケーション(1)
ネコと人間の関係 ゴロゴロ、スリスリ、モミモミ、ネコのおみやげ、わがまま、好き嫌い

〈4〉ネコと飼い主のコミュニケーション(2)
自己主張、爪とぎ、咬み猫、環境の変化、家族の変化、動物の友達、飼い主の出産など

〈5〉ネコのからだと感覚
感覚器官(鼻・目・耳・舌・ヒゲ)の働き

〈6〉ネコの心理と表情
シッポの働き、鳴き声、表情、体の動きと心理、知能

〈7〉ネコと仲良くなる方法
おもちゃ遊び、部屋の遊び、映像、しつけの仕方、鏡テスト

〈8〉ネコの健康管理
危険な食べ物、病気の発見、老化現象、年齢換算、犬猫病院のかかり方、体温の計り方など

〈9〉ネコの結婚・出産・子育て
性行動、妊娠・出産、子猫の成長、親子の本能、子猫の教育、子猫の遊び

〈10〉ネコ同士のコミュニケーション
テリトリー、マーキング、ケンカ、優劣関係、猫の集会、社会行動など

〈11〉ネコのルーツと種類
猫の祖先、日本猫のルーツ、純血種の種類と性格、長毛種、短毛種、三毛猫の性別など



 ネコに関する疑問に答えます
〈9〉ネコの結婚・出産・子育て

ネコは何歳ころまで繁殖能力がありますか?
ネコの繁殖期は年何回ありますか?
ネコの求愛の仕方を教えてください。
発情期のメスはどのようにオスを誘うのですか?
ネコはどのように愛を交わしますか?
ネコの出産の準備はどのように行われますか?
ネコの出産の様子を教えてください。
生まれたての赤ちゃん子ネコに注意することはありますか?
子ネコたちはケンカをせずに母ネコのオッパイを吸ってくれるでしょうか?
母ネコはどのようにして幼い子ネコを守るのでしょうか?
母ネコが子ネコのウンチを食べるのを見ましたが、食べても大丈夫ですか?
ネコの子育ては夫婦共同で行うのでしょうか?
母ネコは子ネコにどのように狩りを教えるのですか?
子ネコたちはどうやって遊びますか?
子ネコたちは追いかけっこが好きですが、これも狩りの訓練ですか?
子ネコ時代の“遊び”の意義を教えてください。
子ネコの歯は人間みたいに生え替わるのですか?

Q:ネコは何歳ころまで繁殖能力がありますか?

A:ネコが性に目覚めるのは、だいたい1歳前後です。祖先のリビアネコでは1.5〜2.5歳なので、ずいぶん早いように思えますが、これは野生に比べて栄養条件がいいからでしょう。一般にメスのほうが早熟です。メスの場合、早熟な個体では生後3〜9ヵ月にはじめての発情をむかえます。発情がはじまる時期に幅があるのは、その猫が生まれた月と繁殖期が関係します。たとえば2月生まれの猫は、5〜6月にはもう発情しますが、4月生まれだと次の繁殖期である10月まで発情しません。
 オスの場合は生後7ヵ月くらいで発情することもありますが、性的に成熟するのは、たいてい生後12〜16ヵ月くらいです。繁殖能力はメスでは12〜13歳、オスでは15歳くらいまで続きます。

Q:ネコの繁殖期は年何回ありますか?

A:ネコの繁殖期は、野生では1〜3月の冬場だけでしたが、人間に飼われるようになって、初夏(5〜6月)や秋(10月)にも繁殖期が訪れるようになりました。これは餌を与えられることで、獲物をとる労力が減ったためだと考えられています。
 シーズンが到来すると、オスもメスも異性を求めて高く強い独特の鳴き声を出すため、人間にもわかります。しかし、猫自身はその前に、シーズンに入ったことを敏感にキャッチしています。発情期に入るとオシッコなどに多量に分泌される性フェロモンが、異性を強くひきつけるからです。
 メスが恋人を求める声や匂いを出しはじめると、オスは恋人の名乗りをあげます。互いの力関係がわからない初めて出会ったオス猫同士がメスの前で鉢合わせると、激しく闘争することになります。

Q:ネコの求愛の仕方を教えてください。

A:オスは、発情期には交尾意欲が高まります。気持ちの高まりはメスよりせっかちです。メスは発情期に入る少し前から、性フェロモンが分泌され、さまざまなものに体をこすりつけて匂いをつけたり、いつもとは違う匂いのオシッコをしてまわります。オスはこの性フェロモンに誘われてメスより一足早く発情し、メスのホーム・テリトリーに集まってきます。けれどメスはまだ本格的に発情していないので、ひとまずオスたちの恋のさやあてがくりひろげられることになります。
 オスは発情し始めるのが早いだけでなく、メスの発情期をカバーするように前後1ヵ月ほど長い期間発情し続けます。メスによって発情期が微妙にずれるため、発情したメスがいればいつでも応じられるようにしているのです。
 オスは発情すると、ふだんはオシッコをかけないような場所にも頻繁にオシッコをかけるようになります。また、メスの周辺にあるものに体をこすりつけて匂いつけし、自分の存在をアピールします。これらのアピールは特に、メスが発情する前に見られます。同じ家に暮らすオスとメスだと、オスがメスの前におもちゃを持ってきて、目の前で、これ見よがしに遊ぶこともあります。おもちゃでメスの関心を引こうとしているのかもしれません。
 気分がたかまってくると、勃起した自分のペニスをさかんになめるようになります。こうしてオスの気分は最高潮に達しているのに、メスは一向にその気にならないことも。このような場合、そのメスや弱いオスにのりかかって、“強姦”するという異常行動が見られることもあります。

Q:発情期のメスはどのようにオスを誘うのですか?

A:オスはいくら発情しても、メスがその気になるまでは交尾できないという辛い立場にいます。しかもライバルにケンカで勝ったからといって、必ずしも恋の勝利者になれるとはかぎりません。オスは相手をえり好みしませんが、メスは交尾相手を自分で選びます。たいていは強いオスを選びますが、あまり強くないオスを選ぶこともあるのです。
 メスをめぐってオス同士がケンカしたあと、勝利者のオスがその場の匂いをかいだり、その場を少しの間離れたりしている隙に、メスが負けたほうのオスをさっさと受け入れてしまうことが、まれにあります。恋の主導権を握っているのは、あくまでもメス猫なのです。
 シーズン中、メス猫はおよそ10日くらいの周期で発情をくりかえします。最初はオスからの誘いの声にもあまり反応せず、オスが近寄りすぎると、威嚇して追いかえしたりします。けれど気分が高まってくるにつれて、自分からオスを誘うようになります。メスは誘惑するため、体をくねらせながら、地面を左右に転げまわります。転げまわっているうちに、ふと顔洗いを始め、その後ふたたび地面をのたうちまわるということを繰り返します。また、体をあちこちにこすりつけて自分の匂いをつけようとします。このような媚態は、オス猫の前だけでなく、飼い主などの親しい人間の前でも見せます。
 オスを誘惑しているといっても、メスにとってはまだ交尾までの準備段階に過ぎません。媚態は数日かけてだんだん激しくなり、やがて本気でオスを受け入れる気持ちになると、お尻を持ち上げ、シッポをよけて外陰部をさらすようになります。

Q:ネコはどのように愛を交わしますか?

A:「このオスに決めた」と交尾を決意したメスは、そのオスの前でのたうちまわって媚態を示します。しかし、いざオスが近寄ろうとすると、途端に逃げてしまいます。といっても逃げる距離はほんの少しだけで、また地面を転げまわったり、オスに背を向けてかがみこむことを繰り返します。
 さんざんオスをじらしているうちに、オスはいきなりメスに飛びつきます。横からメスにおおいかぶさり、首筋をゆるく噛んでおさえます。これでメスが逃げなければ、交尾はあっという間に終わります。
 交尾後、ちょっとした事件が起きます。オスが射精後うしろにさがると、メスは「ギャオーッ」と叫んで振り返り、オスに猫パンチを加えようとするのです。まさにこの瞬間まで愛を交わしていた相手が、急に攻撃的になるのですから、オスはびっくりして跳びのいてしまいます。
 オスのペニスにトゲがあり、一説には膣から引き抜くとき、メスは痛い思いをするが、この痛みが刺激となり、排卵が起きるということです。猫は交尾するときのみ排卵があるため、それだけ確実に妊娠できます。メスは痛みという負担を背負いますが、子孫繁栄のためには合理的なシステムといえます。
 自由に外出して愛の交歓をおこなう飼い猫や野猫は、交尾の際、たいていは人気のない、見通しのよくない場所を選びます。そのため私たちが外で交尾現場を直接目にすることは、あまりありません。猫の性行動でわかっていることは、観察できる範囲のことなので、野生に近い状態の恋愛には、多様なバリエーションがあるとも考えられます。

Q:ネコの出産の準備はどのように行われますか?

A:猫の妊娠期間は平均63日です。交尾後3週間目くらいに、食欲をなくす、吐く、などのつわり症状が見られることがあります。また、乳首がピンク色にかわりはじめます。さらに妊娠の兆候は、交尾後30日くらいではっきりしてきます。乳首がピンク色になるだけでなく、乳房も少しふくらんでいきます。お腹のふくらみも見た目にわかるようになります。その後、お腹はどんどんふくらんでいき、食欲も増していきます。
 そして、出産が近づくと、猫は大きなお腹を抱えて、ソワソワと落ち着きなく歩き廻るようになります。出産・育児に都合のよい場所を確保するためです。猫が望んでいるのは、静かにひとりで出産できる、暗くて人間の目が届かない場所です。室内飼いの場合、ふだんはあまり入り込まないような場所も熱心に調べてまわるので、室内が荒らされることもよくあります。
 屋外で出産する場合は、犬やカラス、他の猫などに見つかりにくいことも重要な条件になります。知らない間に、物置で野ネコが出産していたというケースは多いものです。都会暮らしの猫にとっては、人間があまり出入りしない物置あたりが、理想に近いのかもしれません。
 ところで、動物的な本能に基づけば、出産は人間に見られたくないものですが、ふだん飼い主に強く依存している猫の場合、出産場所を飼い主のそばに選ぶことがよくあります。暗くて静かな場所に出産用の箱を用意してあげたのに、結局は飼い主のベッドの上で出産・・・というケースもよく見られます。

Q:ネコの出産の様子を教えてください。

A:母猫のお腹に何匹子猫がいるかは、生まれてみないとわかりません。子猫の数は1〜8匹と幅が広く、若い猫や高齢の猫は数が少ない傾向があります。平均すると4匹程度ですが、ときに10匹以上生まれることもあります。猫のおっぱいは8個なので、この場合は乳を飲めない子猫も出てしまうことになります。
 出産が迫った猫は、その日は食事をとらず、ソワソワと落ち着きがなくなります。やがて陣痛が訪れ、猫はお腹を激しく収縮させて、1匹目を出産します。生まれてきた子は羊膜に包まれているので、母猫の最初の仕事は鼻と口のあたりをなめて羊膜を破り、呼吸をさせ、その後、へその緒をかみ切り、胎盤を食べます。胎盤には栄養が含まれているので、これでしばらく狩りをしなくてすみます。次に、子猫の体をなめて被毛を乾かせば、ようやくひと安心です。最初の出産から30分くらいで次の子が生まれます。一連の作業を繰り返し、出産は2〜6時間かかる大仕事になります。
 母猫は生まれた子をなめつづけます。なめることには、被毛を乾かすだけでなく、子猫の体の血行をよくし、新陳代謝を促進させる効果もあります。そして子猫をなめることによって、母猫はそれが自分の子であることを認識するのです。もし出産後の世話を放棄したり、外敵に襲われたりして、なめる前に母子が別れてしまうと、母猫は自分の子を認識することができなくなります。

Q:生まれたての赤ちゃん子ネコに注意することはありますか?

A:生まれたばかりの子猫は、まだ目も見えず、耳も聞こえず、嗅覚や触覚だけを頼りに生きています。しかし生後1〜2週もすると、目が開き、耳も聞こえ、外界のさまざまな刺激を受けとれるようになります。
 五感が働くようになると、子猫は周囲から入ってくる情報をどんどん吸収していきます。そして生後9週くらいまでの間は、五感や経験から得たあらゆる知識を脳にインプットしていきます。そのためこの時期は、その後の猫の成長にもっとも重大な影響を与える、たいへん重要な期間になります。
 子猫は多くの時間を、母猫のやわらかく温かい体に包まれ、舌でやさしくなめてもらったり、きょうだい猫とじゃれあったりなめあったり、体をよせあって眠ったりして過ごします。こうした体のふれあいは、愛情表現のもっとも基本となるものです。触れられたりなでられたりすることで、被毛の根元にある神経のひとつひとつが刺激され、気持ちがおだやかになっていきます。スキンシップは子猫の心身とその後の成長に大きな影響を与えるのです。
 生後5〜6週目の離乳期前後には、母猫のもとを少しずつ離れて、身のまわりの探検をはじめます。何にでも典味を持ち、触ったり匂いをかいだりして、自分の住む世界をひとつひとつ知っていきます。この時期にあまり刺激のない生活を送ると、成長後、ものごとを異常に怖がったり不安がったりすることがあります。人間に対しても同様で、この時期にあまり人に会う経験がないと、将来人になつきにくくなります。

Q:子ネコたちはケンカをせずに母ネコのオッパイを吸ってくれるでしょうか?

A:この世に誕生して呼吸をはじめた子猫は、頭を大きく振りながら、前足をオールのように動かし、前進し、おっぱいの場所をさがします。目はまだ見えないので、鼻先でやわらかいものを押してみては次の場所にゆっくり移動するということを繰り返し、やがて乳首を発見すると本能的に吸いついて、おっぱいを飲みはじめます。
 子猫が最初に飲む「初乳」は非常に重要なものです。初乳には、成長に必要な栄養素だけでなく、病原体に抵抗する抗体がたくさん含まれているからです。抗体は1年ほどで消えてしまいますが、その間、子猫は病気にかかりにくく、無事に成長することができます。
 おもしろいことに、生後2〜3日たつとそれぞれの子猫が自分で吸う乳首を決めます。それぞれの乳首には異なる匂いや舌ざわりがあり、自分の好みにあわせて決めているようです。そのため試しに母猫のお腹を洗ってみると、匂いが消えて自分の乳首がわからなくなり、子猫たちは混乱してケンカをはじめてしまいます。
 子猫の爪は、おとなと違いまだ引っ込めることができません。ちょっとした争いでもお互いに傷だらけになる可能性があります。自分専用の乳首を決めているのは、無益なケンカを防ぐためだといわれています。
 「この乳首はぼくのもの」という占有意識は、生後2週問くらいすると、薄らいでいきます。自分専用乳首しか吸えないのでは、母猫が事故などでいなくなると、生きていけなくなります。そのため、ある程度時間がたつと、他の猫のおっぱいでも吸えるようになっているのでしょう。

Q:母ネコはどのようにして幼い子ネコを守るのでしょうか?

A:生後1週間くらいは、子猫は母猫のそばを離れません。しかし、筋肉が発達してくると、動きまわっているうちに、巣を離れてしまうことがあります。母猫が出かけようと歩き出し、乳首に吸いついていた子猫が振り落とされることもあります。巣から離れてしまった子猫は、周囲に安心できる匂いがしないので、不安な気持ちで一杯になります。母猫やきょうだい猫の温もりがなく、体も冷えます。
 巣に戻りたいという思いで、子猫は頭を左右に振りながらはいずりまわります。このとき子猫は片方の前足だけを出して進もうとするので、自然に円を描く動きになります。この旋回運動のおかげで、たいていは無事に巣の中央に戻ることができます。
 子猫がいる場所によっては、旋回運動をしても巣に戻れないことがあります。このようなときは、「ミャーミャー」と澄んだ高い鳴き声をあげて、母猫を呼びます。子猫の救助要請の声を聞きつけた母猫は、急いでやってきて子猫の首筋をくわえ、巣に連れ戻します。子猫をくわえるときは、何度かかみなおし、加える力を微妙に調整します。子猫のほうは、首筋をくわえられると暴れなくなり、巣に戻るまで母猫になされるがままにじっとしています。
 どのような動物でも、子を守ろうとする母の愛は強いものです。母猫は、巣にオス猫やイヌが少しでも近づくと、威嚇なしにいきなり攻撃します。ボス猫だろうと大きな犬だろうとひるむことなく、強力なネコパンチを与えて、追いかえそうとします。

Q:母ネコが子ネコのウンチを食べるのを見ましたが、食べても大丈夫ですか?

A:生まれて間もない子猫は、自発的にオシッコやウンチをすることができません。母猫がお尻をなめ、その刺激によって反射的に排泄することができるのです。さらに母猫は子猫が排泄すると、そのウンチを食べてしまいます。排泄は巣のなかでおこなわれるので、ウンチを放置しておくと細菌が繁殖して不潔になり、病気にかかる危険性が高くなります。そのため母猫がウンチを食べて処理し、巣の衛生を保つのです。人間にはちょっとまねできない、母猫の深い愛情表現といえるでしょう。母猫の排泄物処理は、母乳での子育てが終わり、子猫が巣の外に出て排泄ができるようになるまで続けられます。
 母猫が排泄を促すとき、子猫はお尻をなめてもらいやすいよう、シッポをピンと立てます。母の愛を受けるときのこの仕草が、少し大きくなって外に出歩けるようになると、甘えを表現する行動になります。母猫についていくとき子猫は、排泄を促してもらっていたときのように、尾をピンと立てて歩きます。母猫でなくても、飼い主などについていくときには、同じように尾を立てます。頼もしい母猫や飼い主に対する愛情を示しているのですが、まるで旗を立てたような目立つ姿は、巣を出て移動するときの目印という別の効果にもなっています。
 シッポを立てて愛情を示す行動は、成長してもずっとつづきます。母猫と別離すると、今度は飼い主に対しておこなわれるのです。飼い主に甘えたり、何かをねだるときに猫がシッポを立てるのは、子猫時代のこの行動がもとになっているのです。

Q:ネコの子育ては夫婦共同で行うのでしょうか?

A:動物園などでのヤマネコの観察では、まれにオスが巣に餌を運んだり、巣を守ったりする行動が報告されています。本来の野生のように自由に歩きまわれない状況では、オスにひそんでいる育児本能が、顔を出すこともあるようです。しかし、基本的にオスは決まったメスと暮らしたり、子育てに参加したりすることはありません。メスとの交尾が終われば、次のメスを求めて移動します。猫の世界の子育てはメスだけにまかされた一大事業です。
 同じネコ族であるライオンは群れを作って生活しています。この場合2〜3匹のメスが子どもを共同保育します。イエネコはメスでも基本的に単独生活ですが、子育てのときはライオン同様に集団で行うことがわかってきました。特に母と娘、姉妹といった血縁のある猫が同じような時期に子を産むと、母系家族が協力しあって手育てをします。お互いの子に乳を飲ませたりなめたりして子守をし、ときには他の猫から生まれた子猫のへその緒を切るなどの助産婦役をすることもあります。単独生活のイエネコがなぜこうした集団保育をするのか、理由はわかっていません。
 血縁でなくても、赤ちゃんを抱えている母猫は他の子猫もすぐに受け入れます。ただ、子猫との出会い方によって対応が違ってきます。子猫の後ろから近づいたときには、肛門の周囲の匂いを嗅いで、すぐに排泄を促すためになめてあげます。ところが、子猫の前方から近づいた場合、顔の匂いを嗅ぐと、顔をたたくなどして拒否します。

Q:母ネコは子ネコにどのように狩りを教えるのですか?

A:子猫がさかんに動きまわるようになると、そろそろ狩りの仕方を覚える時期となります。子猫が自分で餌をとって自立して生きていけるよう、母猫は優秀な教師にならなくてはなりません。まずは軽くウォーミングアップ。自分のシッポの先を左右に動かして、子猫にじゃれさせます。母猫は子猫を遊ばせながら、動くものに対してすばやく反応することを、子猫に教えているのです。
 生きていくうえで狩りが欠かせない野ネコの場合、生後35〜42日ごろになると、母猫は、最初は死んだ獲物を持ちかえり、食べることを教えます。次に生きた獲物を巣に持ちかえり、食べるためには殺さなくてはいけないことを教えていくのです.
 この時期は乳歯が生えそろったころです。おっぱいを飲む以外に、母猫が持ちかえった獲物を食べることで、離乳は急速に進んでいきます。
 動くものなら何でも獲物だと思って攻撃してしまうと、ときに強い動物に反撃される危険があります。母猫はこの点も教育を怠りません。実験の結果によると、母猫は生きた獲物を運んでくるとき、小さくて安全なマウスと体が大きく反撃される危険性のあるラットを鳴き声の違いで区別するよう、子猫に教えていることがわかっています。
 また、犬や人間などが近づくと、母猫はフーフーいって威嚇しますが、このときもし子猫が巣に戻ることをとまどうと、パンチを加えて力ずくで巣に戻らせます。この母猫の態度から、子猫は何が敵であるかを学びます。

Q:子ネコたちはどうやって遊びますか?

A:巣のなかでよりそって寝てばかりいた子猫たちも、生後3週間くらいたつと巣の外に出て、きょうだいで活発に遊ぶようになります。このころになると、母猫は外出が多くなります。きょうだいで遊ぶことで、母猫のいない寂しさを紛らわせることもできますが、実際には母猫がいる時の方が遊びは活発になります。遊びには心からくつろげる環境が必要なのです。
 ひと眠りした後の遊びの時間になると、子猫はまず、遊び相手の目の前でゴロンと寝転がります。寝転がったまま、相手の顔や体に前足を出したり、噛みつくような仕草をして、遊びに誘います。すると相手もこれに応じて、いよいよ遊びが始まります。最初のうちは、相手との簡単なやりとりだった遊びも、だんだん複雑になっていきます。追いかけたり逃げたり、しのびよったり跳びかかったりと、遊び方が激しくなり、最後は相手の首に腕をからませて、とっくみあいをするようになります。
 追いかけたり逃げたり、噛んだり、しのびよったりといった遊びの要素は、そのほとんどが狩りに必要なものです。遊ぶことで、狩りの能力を養っているのです。ただ遊びは、狩りのためだけにするのではありません。きょうだいが一緒に戯れることで、猫という動物同士の仲間意識が生まれ、また性行動の勉強にもなっています。遊びのなかには性行動に似た動作があり、子猫時代にとっくみあいの遊びをおこなうことで、精神的にも身体的にも正常な性行動ができるようになるのです。

Q:子ネコたちは追いかけっこが好きですが、これも狩りの訓練ですか?

A:猫が大好きな遊びは、追いかけっこです。2匹あるいは数匹が一緒になって、夢中で駆け回ります。追いかけっこをはじめる合図は、シッポを逆U字型に曲げること。このサインはおとな猫では威嚇をあらわしますが、子猫の遊びではふざけて「ほら、競走しよう」との気持ちを表しています。そしてこのシッポを相手に見せて気を引き、「さあ、追いかけて」と誘います。それに応じて相手が夢中で追いかけ、やがて追いついて少しじゃれあったら、今度は追いかけていた側がシッポを逆U字型に・・・。こうして追う側と追われる側がめまぐるしく交替しながら、子猫たちは延々と追いかけっこを続けます。
 追いかけることが獲物を追う動作であるように、子猫の遊びには狩りの基本的な動作がたくさん含まれてはいますが、狩りの一連の動作を統一的におこなっているわけではありません。狩りの要素がバラバラに行われているからこそ、遊びだともいえるのです。子猫が遊びを介して得ているものは、狩りそのものの方法というより、自分の能力を知ることだといえます。走ったり飛び跳ねたりして遊ぶことで、自分がどのくらいのスピードで走れるのか、どのくらいジャンプできるのかなどを知ることができます。あるいは、自分がどういう攻撃が得意なのかといったことを、とっくみあいなどのときに覚えていきます。このように自分の能力を把握しておくことが、母猫と外に出て本格的な狩りの訓練をおこなう際に役立ちます。

Q:子ネコ時代の“遊び”の意義を教えてください。

A:猫は“ごっこ遊び”が大好きです。きょうだいや一緒に育った仲良し猫などと、ケンカごっこ、待ちぶせごっこなどを飽きずに繰り返します。仲間がいなくても、毛糸玉や木の葉などを相手に、転がしたりじゃれついたりして、ひとりで遊ぶこともできます。ときには、遊び道具になるものがなくても、幻覚を相手にして遊ぶことさえあります。何もないのに壁にとびついて、ハエをたたくような動作をしたり、何かを追いかけるような動作をしたりすることがあるのです。まるでそこに何かあることを想像しながら、遊んでいるように思えます。このように生きるうえで直接必要のない多様な遊びを楽しめるのは、知能が高い証拠といわれています。
 子猫時代にきょうだいや仲間と十分に遊ぶことは、猫として一人前に成長していくうえで必要不可欠なことです。遊びを通して、狩りの訓練、ケンカの仕方や猫同士のあいさつの仕方などを学んでいきます。それに何より、猫は遊ぶことが大好きなのです。なかでも人間に飼われることで幼児化したイエネコは、子猫時代だけでなくおとな猫になっても、生活のなかに遊びが欠かせません。そのため、生後2〜3ヵ月できょうだいと引き離され、その後1匹だけで飼われて生活する場合、遊びへの欲求が満たされず、成長が妨げられることがあります。
 しかし、人間が相手でも遊びはできます。追いかけっこやかくれんぼなど、飼い主が一緒に遊んであげるといいでしょう。留守がちで相手になれる時間が少ないのであれば、遊び相手としてもう1匹飼ってあげるのがベストです。

Q:子ネコの歯は人間みたいに生え替わるのですか?

A:猫は生後2〜3週間ほどで乳歯(26本)が生え始め、離乳期が終わる8週目あたりには生え揃い、生後3ヶ月から6ヶ月頃には永久歯(30本)に生え替わります。 この歯の生え替わりはほとんどの哺乳動物にみられ、顎(あご)の成長に合わせて生え替わり、成長した時点で隙間なく歯が生え揃うようになっているわけです。ちなみに人間は32本、犬は42本です。

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