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ストーリー

スペースパラサイト
★宇宙寄生体★
The Parasite Monster From The Outer Space
作者・栗林 元
はじめに
このストーリーは某映画シナリオ募集と、その結果(当然スカ)判明後には、 某マンガ雑誌の原作募集なんかをねらって書いたもので、途中でその気がなく なりシナリオ化せずに放っておいたものを少し手直ししてアップロードしたも のです。というのも、私はロメロの「ゾンビもの(・・・オブ・ザ・リビング・デ ッド、まあ彼の作品はA級ですが)」とか、フルチの同ジャンル「サンゲリア」 とかの、B級ホラー・マカロニホラーが好きでして、邦画ではこのジャンルの 傑作・怪作が少ないなあと思っていたからです。考えるに、世界的に此のジャ ンルの作品がはやりだした頃には、すでに大蔵とかの映画会社が成人向き映画 に専門化してしまっていたということもあるでしょう。期待していたVシネマ も、ご存じのようなお寒い状況ですし・・・。
しかし、最近の「映画秘宝」や、インターネットのその手のページには、こう いった作品に対する悲喜こもごもの想いが載っておりました。ひよっとすると この酒の勢いで書き上げたようなストーリーも喜んでくれる人がいるかもしれ ん。そして物好きな人が英訳してロジャー・コーマンが読むかもしれん(それ はないか・笑)、あえて恥を忍んで掲載します。
でも本来のデジブンはまじめな文芸サイトです(っていってももう遅いよ、「大 魔神92」を載せたあとじゃ・・・。)

・舞台
物語の舞台となる名古屋の地下街は総て実 在いたします。
・シナリオ化にあたってのアドバイス
この物語の主眼は、地下街という限定状況 下でのパニックです。あまり妙な人間ドラマ を「織り込まず」、ドキュメンタリータッチ でぐいぐい押し切るべきかと思います。
・恐怖について
この物語は、いわゆるゾンビ物のバリエー ションの一つです。
ゾンビ物自体が吸血鬼のバリエーションの 一つです。この手の「伝染拡大」恐怖は、中 世のペスト恐怖などが下敷きとも言われてい ますが、むしろ現代では、没個性恐怖・日常 への埋没恐怖とか、自分は他人とは違う、と いった意識に対して、みんなと同じになれば 楽だよ、と語りかけてくるあらゆる物に対す る嫌悪を誘発するような恐怖ではないかとも 感じています。
だからこそ、全世界でゾンビ物が作られて いるのでしょう。もっともそこまで作者が意 識している作品はあまりありませんが。
主な登場人物
由美・・・・地下街の店に勤めている。
武・・・・・由美の恋人
山城・・・・地下街封鎖部隊の司令官
富山・・・・医師
藤田・坂井・地下街管制センターのスタッフ


1.プロローグ
  アメリカ航空宇宙局
  廊下を走ってきた初老の男が緊張した表
  情で部屋に入る。
    いくつも並んだコンソールの前の男たち
    慌てふためいている。ただし人数は少な
  い。
男  「本部長、さっき受信しました、とんで
  もない内容です」
初老「また故障かね、パラボラは大丈夫のは
  ずだったろ」
男  「どうやら事故のようなんですが、まず
  は録画を見てください」と壁面の大モニ
  ターを示す。
男  「木星の軌道上からですからちょうど6
  時間前に発信されたものです」
    「他には」
    「圧縮されたデータが高速送信されてま
  す」
    男たちが見守るテレビモニターに映る荒
  れた映像。宇宙服の男が話している。映
  像にはノイズが交じり音声も聞き取りに
  くい。
宇宙服「緊急連絡、こちらは木星軌道上の宇
  宙船ディスカバリー。先の定時連絡で伝
  えた生物らしきもののデータを圧縮して
  送信した。この報告が地球に着くころに
  は、我々は全滅していると思う」
    男の背後にあるいくつもの船内モニター
    には船内各所の様子が映っている。
    「信じられんことが、このモジュールの
  外で起きている」
    宇宙服の男はそう言うとモニターを指さ
  した。

    ロックされたドアを開けようとするゾン
    ビ化した隊員たちの血まみれの姿。
  船内で行なわれている銃撃戦。
    映像が送られている司令室を守る宇宙服
  の男たちが、ゾンビ化した隊員たちに銃
  弾を浴びせているのだ。
  眺弾による壁の穴からエアが漏れ、気圧
  の低下を知らせるエマージェンシーコー
  ルが船内のあちこちから聞こえてくる。

機械的な女の声「気圧が低下しています。速
  やかに近隣のモジュールに待避してハッ
  チをロックしてください。気圧が低下し
  ていま・・・」

    男はその様子を見、悲しげに首を振ると
    「最後の連絡を終了する。さよなら」と
  言い、コンソールの上に置いてある銃を
  手に取ると、口にくわえて引き金を引く。

    ぷつんっと、モニターの映像が消え、映
    像の収束した白い輝点がモニターの中央
    に残る。
    やがてその白い点が、宇宙空間に浮かぶ
    太陽に変わり、その太陽に向かい宇宙空
    間を飛行する何万という卵が映しだされ
    る。

タイトル  宇宙寄生体(スペースパラサイト)

    以下の絵に重ねてナレーション

  二隻の宇宙船。ボディにはメッサー(外
  科医)1号・2号という船名表示。
    宇宙空間に浮かぶ卵をつかむマニュピレ
  ーターの手。
    台上に固定された卵(岩石のよう)を回
  転刃が切開し、ピンセットが中からぴく
  ぴくとうごめく白い寄生虫を取り出す。

NA  「無人探査船の調査によりこの卵はシリ
  コンとチタンを主成分とする堅い殻の中
  に白い線虫を抱いたものであることがわ
  かった。」      

    虫をスキャンした輪切りの映像。コンピ
  ューターによる組織図面。何枚にも分か
  れた成長の過程を示す写真。瓶の中の標
  本。

NA 「この線虫はシェルワーム(殻虫)と名
    付けられた。」                      

    船内のベッドに固定された何匹もの猿。
    そのおびえた表情。ピンセットにつまま
  れた寄生虫が腹の皮を食い破り猿の体内
  に侵入する様子。
    コンピューターで描かれた映像が、猿の
  体内で成長していく寄生虫の姿を描き出
  す。時間経過ごとのデジタルな映像だ。
    *寄生虫は脊髄にそって尻の部分を猿の
  脳に差し込んでいる。その尻からは白い
  神経繊維が草の根のようにのび脳を包ん
  でいく。
      
2.地下街(名古屋市栄地区)
    テロップ「西暦201X年8月13日 
    午後12時00分」

    地下街の風景。行き交う人々に交じり、
    家電店の店頭でテレビを見守る人々、食
    堂で食事をしながらテレビに注視する人、
    街頭の大型モニターを注視する人など
   そのモニターに映るバラエティ番組の画
    面下に、ポンというチャイムと共にテロ
    ップが出る。

    ”**TVニュース速報  本日午後0時、
    アメリカ航空宇宙局のエーリアン本部は
    地球軌道に接近中のシェルワーム群に対
    し、核ミサイル攻撃を行なったと発表し
    ました“
    通行人達の足がとまり、「ついにやった
    な」等の声が上がる。

    地下街のブティック
    客の相手をしながら、店長以下全員がテ
    レビを気にしている。
    売り子の女の子に主人が、「由美ちゃん
    NHKにして」
    NHKは特番を打っている。

3.テレビの画面
    NASA駐在の特派員が同様の内容を伝
    えている。画面にはロケット発射の映像
    等。
司会「ここで、このシェルワーム群について
    もう一度ふりかえってみましょう」
    学者登場。映像を交え以下の説明。
    4年前に全滅したディスカバリー号が発
    見したシェルの群体が生物の卵であると
    いうこと。その後、無人探査機メッサー
    (外科医師)1号・2号により、彼らが
    人に寄生する生物であることがわかった
    ということ。彼らは外宇宙から飛来し、
    太陽と木星とのラグランジェポイントで
    減速され、付近を通過した彗星の引力に
    よって地球の軌道にむかっていたことな
    ど。
特派員「スタジオの**さん、こちらNAS
    Aの**です。現在ミサイルが次々と爆
    発しています。たった今NASAからは、
    ミサイル攻撃で卵の八割を破壊したとい
    う公式声明が出されました」
    スタジオでは軍事評論家を交えて、成層
    圏での各国空軍の第二次防衛、さらに、地
    上・海洋に落下した卵の駆逐作戦などが
    説明され、同時にその訓練時の映像が流
    される。
    *ここでは4年間に人類のとった防衛措
    置を観客にアピール。

    スタジオ
評論家「ミサイル攻撃から漏れた残りの2割
  は、大気圏突入の際にさらに15パーセ
  ント程度が燃え尽きると考えられていま
  す。最後の残りを各国空軍の迎撃ミサイ
  ルが攻撃し、地上に落ちたものはやはり
  各国の陸軍がシラミつぶしに殺していき
  ます」
アナウンサー「実に細かい作戦ですね」
評論家「人類の命運がかかっているんですか
  ら当然です。それに4年間の準備期間が
  ありましたからね。おかげで国家間の緊
  張は解けています。そういう意味ではこ
  の虫に感謝しなければいけませんよ」
    にっこりとうなづくアナウンサー。

4.地下街
    テレビを見守る人々の間に広がる安堵の
    ためいき。まばらにだが拍手も広がる。

5.東京、防衛庁の地下司令部
    緊迫した空気。
    大型モニターに映しだされたマップの上
  を、レーダーでトレースされたシェル群
  が点線を引きながら移動している。
    「空自のF16迎撃網を突破したものは
    現在中部山岳地帯に向かって落下中。た
    だしごく僅かが、名古屋市中心部に落下
    すると思われます」
    いろめき立つ部屋の中。
指令「浜松のエーリアン駆除部隊にコンディ
    ショングリーン、消毒作戦のフェーズ1
    を発動」
    機械的な女の声が復唱。
  「コンディショングリーン、消毒作戦フ
  ェイズ1が発動されました。これは演習
  ではありません」

    浜松の航空自衛隊基地
    陸自のマークをつけた兵員輸送ヘリの中。
  山城が無線で連絡をとっている。
山城「コンディショングリーンだ。今、浜松
  を出発する。守山の駐屯地からはもう部
  隊が出ている。現地で合流する。予定は
  14:20(ひとよんふたまる)時の予
  定」

6.地下街のブティック
主人「由美ちゃん電話だよ」と受話器を渡し
    ながら、小さく「彼氏」と笑う。
    由美は照れ臭そうに笑いながら話す。
    彼氏(武とでもしておく)は携帯電話で
  車から。デートの打ち合わせである。
武  「うん、俺このまま直帰になるからさ、
  そう、いまそっちに向かってるんだ」  
由美「じゃあ、お店が引けたらクリスタル広
  場で、そう日産のショールームのところ、
  うん」

   車とブティックの間を視点は交互に移動。
    やがて車は地下街のパーキングに入って
    通信は途切れる。
    その時、店のウインドーがかすかに震え、
    同時に一瞬電気が瞬く。
主人「あれっ」

7.セントラルパーク地上
  植え込みの陰からうっすらと煙が一筋立
  ち上っているが、行き交う人々は誰も気
  づかない。

    セントラルパーク地下街駐車場
    小さく地下街の喧騒が聞こえてくる。
    片隅の柱の影に、一筋の陽光がさしこん
    で、うっすらと舞い上がるコンクリのほ
    こりを照らしている。天井に小さな穴が
  開いているのだ。
    その下で、床に半分めりこんだ卵が白い
    湯気を上げている。
    やがて卵が割れ、白い線虫がにょろりと
    這い出すと、日光を避けて壁際に向かい
    音もなく物影に消える。

8.地下街集中管制室
藤田「おい、どうした」
坂井「パーキング天井のメインケーブルが停
    電しました。現在サブラインでバックア
    ップ中。ケーブルが断線したようです」
    坂井は立ち上がり部屋を出る。

9.パーキング
    武の車が入ってくる。

    壁際に停車している一台のワゴン車が小
    さく揺れている。中では、若いカップル
    が半裸でもつれあっている。
女  「やだようこんなところで」と言いなが
  らまんざらでもない。
男  「だれも来やしないよ」といいながらの
  しかかる。
    そのワゴン車のタイヤを這い上がる線虫。

    車から降りる武。

    細く開いた窓の間からワゴン車の中に消
    える線虫。やがて女の太股を上り始める。
女  「もう?せっかちねえ」と甘えた声。
男  「えっ?」(けげんそうに)
    突然女の目が大きく見開かれる。

    ワゴン車の横を通り過ぎ、地下街のショ
    ッピングモールへ消える武。
    いつしかワゴン車の揺れは止まっている。
  しんと静まり返った車内。
    やがてドアのすき間から一筋の血が滴る。
    助手席から若い女が降り、服の乱れを直
  すと、バックミラーで髪をなおして颯爽
  たる足取りで地下街への出口へと歩いて
  いく。自動ドアが開き、わん、と地下街
  の喧噪が入ってくる。人混みに紛れて消
  える女の赤い服。

10.地下街
    由美が店から「お先に失礼します」と言
  って出てくる。
主人「明日は11時からでいいからね」
    にっこり微笑んで遠ざかる由美。
    いつもと変わらぬ週末の地下街。ただし
    壁に号外が貼り出されている。

号外「殻虫掃討作戦!人類の運命は」

    パーキングにやってきた坂井、天井から
  の陽光に顔をしかめるが、その足下に卵
  の殻を発見し、手にしていた工具を落と
  す。慌てて電話へ走る。

    管制室のテレビに特番が映っている。
学者「つまり彼らは殻から出た跡、生物の発
  する赤外線と二酸化炭素などをサーチし
  ながらあらゆる手段で宿主を捜すんです
  ね。これ、この器官がセンサーの役割を
  ・・・」

    武が「毎度おー」と言いながら管制室に
  入ってくる。
武  「いやー今度うちから出す振動計なんす
  けどね、エスカレーターなんかの点検に
  ばっちりなんすよ、で、菱電サービスさ
  ん紹介してくれま・・・あれ」
坂井「たけちゃん、今は間が悪いわ」
    きょとんとした武の前で坂井と藤田は大
  慌てである。
    以下、てきぱきとしたカットをつなぐ。

    管制室で警察へ電話する藤田。

    地上から猛スピードで侵入してくる警察
    車両。

    地下街のトイレ
  例の赤い服の女がドアが半開きの個室の
  中でうずくまっている。
    嘔吐の音。
  鏡の前で化粧を直している女子高生二人
    「酔っぱらいよお」
    「いやあね、こんな時間から」
    個室の中、女は口から白い卵を吐いてい
  る。便器の中にぎっしりと詰まった卵。

    管制室。
武  「由美ちゃん!」とつぶやきながら飛び
  出す。

    各箇所で突然降りはじめるシャッター。

    パーキングでは警察官による検死作業が
    始まる。

検死医師「ひどいね、食い荒らされてる。し
  かも人の歯形だ」

    地上へ続く階段の踊り場。
    荷物を抱えた母とボールを持った女の子
  が階段を上っている。女の子は手にして
  いたボールを落として「あ、」と言いな
  がら階段の下に走る。
  そのときシャッターが突然閉まり始める。
    母が階段の上から振り返りながら
母「奈美ちゃん!」
    階段の下で幼児が振り向くとシャッター
  は完全に閉まっている。

    別の階段でも。
    降りてくるシャッターを唖然として見守
  る浮浪者・テレクラのティッシュを配っ
  ているパンク野郎など、戸惑う人々の様
  子。

    地下街。
    行き交う女性に声をかけているナンパ氏。
    声をかける者とカメラの2人組。
    「すいません、あやしいものです、今あ、
  ビデオとってんだけどさあ、ちょっとア
  ンケート・・・」
    「今それどころじゃないでしょ」と女た
  ち。
    それを遠くから見つめる赤い服の女。

    地下街の地上、セントラルパークに降り
    てくるヘリコプター。降り立つのは駆除
    部隊司令官の山城である。
    警察の指揮官が近寄り敬礼。何事か話し
  ているがヘリの音で読者には聞こえない。
山城「隔離は完了か・・・」と腕時計を見な
  がらつぶやく。
    公園から人々を追い立てる警官。隣接す
  る駐車場には警察の誘導で自衛隊の兵員
  輸送車が入ってくる。

    地下街。
    例の二人組。「あと一人はこまさんと一
  本の作品にはならんぜ、ったくう」とか
  言っている。「おっ、あれあれ」とカメ
  ラが指示してナンパ氏のほうが後ろから
  接近。
    「あのう」と声をかけたナンパ氏。相手
  は赤い服の女だ。
    いきなり
女  「いいわよ」と振り向いた女を見て、男
  たちは、ごくりと唾を飲む。なめるよう
  なカメラ。いい女なのだ。

11.地下街管制室
    テロップ「午後2時00分」
    事情を説明するアナウンスが地下街に流
    れ、通行する人々に協力を呼びかけてい
    る。

アナ「お客様にご注意いたします。セントラ
  ルパーク地下街にシェルワームの卵が落
  下した疑いがあります。パークは現在隔
  離閉鎖されました。出口は二カ所です。
  パーク職員、警察、自衛官の指示にした
  がって落ち着いて避難してください」

    管制室のパネルが隔離状態の地下街を表
    示。4台のモニターが数秒間隔で地下街
  各所を映しだしている。
    警察の現場司令と山城が引き継ぎをして
    いる。それぞれの説明に以下の光景が重
    なる。聞いているのは各持ち場の陸上自
  衛隊下士官。

山城「現在地下街は二カ所をのぞいて閉鎖さ
  れている。その二カ所を検問所とし、一
  人一人を検査の上、地上へ避難させてい
  く」
    下ろされたシャッターの内と外に立つ警
    官と自衛隊員。

    「近隣地下街への拡散を防ぐために現在
  地下鉄は運休している。この栄駅に向か
  う途中の列車は、反対方向の駅に避難。
  また逆に栄から出る列車は、現在停止さ
  せて、警察官が乗客をこの駅まで誘導中
  だ。すぐに合流して誘導を警備する。彼
  らも念のためチェック後に地上へ避難さ
  せる」
    全面運休の地下鉄から降りて歩く乗客。
    線路の守りを固めている武装自衛隊員。
    隊員たちの死角でうずくまっている男が
  一人。顔から油汗を流し口から血の混じ
  った涎を垂らしている。足下に一つ、涎
  にまみれた卵が落ちている

    隔離された地下街の人々を誘導する地下
    鉄職員と自衛隊員。

    「寄生された者を発見した場合は、速や
  かに処理する。現時点では一度寄生され
  たら宿主は死ぬしかない。早く楽にさせ
  てやると考えてくれ」

    伝令のため地下街各所の隊員達との間を
    走り回る自衛隊偵察部隊の迷彩バイク。

    状況設定
    地下街にはおよそ12000人の人間が
    隔離されている。自衛隊員は2箇所に設
    けられた検問所において、それぞれの者
    を超音波でスキャンして、寄生の有無を
    確認後、地上へ開放する。同時に、寄生
    されゾンビ化した人間をいぶりだしてい
    くのである。

12.地下街
アナウンス「地下街の皆さんにお願いいたし
    ます。こちらは市営地下鉄と陸上自衛隊
    です。現在、セントラルパーク地下街は
    完全に隔離されています。隊員の指示に
    従い、*番と*番の出口にお集まり下さ
    い。その2箇所以外からは一切出入りが
    できません。繰り返します・・・」

    武が携帯電話で由美と話している。
    周囲は避難する人波、シャッターをおろ
  して店を閉める商店主などの光景。
武  「え、ちょうど反対側だ。うん迎えに行
  くよ。もしもし、あれ」
    電話が切れる。

    地下街電気屋のテレビ。
    「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝
  えします。今日午後二時、名古屋市警察
  本部と陸上自衛隊中部管区・・・」と言
  いかけたアナウンサーの元にADがすっ
  飛んできて何かを示す。
  「失礼いたしました。CMです」とアナ。

    管制室。
    隊員が山城に「地上との電話回線、携帯
  電話、PHSなどはすべて遮断しました」
山城「報道管制は」
隊員「たった今、首相の許可が降りたそうで
  す」
山城「よし」

  人波とは反対の方に歩いていく由美。
    待ち合わせたクリスタル広場に向かって
  いるのだ。
    自衛隊員がそれを見て、こらそっちへ行
  ってはだめだと注意。こくんとうなづき
  ながらも由美は隙を見て逃げる。

    慌ただしく移動する人々を茫然と見つめ
    る浮浪者。その座り込んだ足元に音もな
    く近づく線虫。

    地下街の一角。まわりから死角になって
  いる。
    ナンパ氏の前でうずくまる女。腰のあた
  りで女の頭が揺れている。
男  「すっ、すげえよ、彼女!舌が二本ある
  みたいだ」とのけぞって天井を見上げる。
    女が顔を上げ淫靡な微笑みを見せる。口
  からは舌と一緒に寄生虫が白い舌のよう
  にのぞく。

13.地下街管制室
    藤田と警官達に線虫についてのガイダン
    スをしているのは部隊に従軍する医師富
    山である。
富山「連中はまだ人間との寄生がうまくない
    んです。だから結局、宿主である人間を
    長く行かしておけない。」
    以下、寄生のメカニズム。
    テレビの中でも学者が語る。
学者「彼らは人体に侵入するとその尾部を脳
  にさしこみ、宿主の記憶と知能を自分の
  ものにすることができます。ほらこの尻
  から出ている球根の根のような白い糸が
  たくさんありますでしょう。これが寄生
  虫の酵素でフラクタル誘導された神経繊
  維なんです」
アナウンサー「彼らの脳はこんなに小さいの
  に人間を操れるのですか」
学者「操るのではありません。かれらは単に
  繁殖する、個体を増やすという意志だけ
  を植え付けるのです。そうすれば宿主は
  衝動につき動かされて彼らの繁殖に力を
  貸すわけです。
  人間の脳をパソコンにたとえれば、彼ら
  は単なるOSみたいなもんです」
  人体を操りながら成長し交尾して産卵繁
  殖する。
    ただし、養分は人体の臓物を食い荒らす
    という雑な方法しかできない(つまりま
    だ人体に適応が足りない)ため、1時間
    から2時間の間に宿主を移動する必要が
    ある。(コンピューターで表示される人
    体の侵食状況シミュレーション)
    以上の学者の解説に合わせて、地下街で
    起きている彼らの伝染拡大を描写しても
    いい。

14.検問所
    列を作って待っている人々。しくしくと
    泣いている幼い女児。
隊員「お母さんは」
女児「外なの・・・」
    隊員は抱き上げ列の前へ進む。人々が、
   「そのこを先に行かせてやれ」とか「兄
    さん男だねえ」等と隊員を褒める。照れ
    臭そうな隊員。

    スキャナーのそば、突然、順番を待つ列
    から逃げ出す男。隊員達が追う。タック
    ルすると男の体がぐしゃりと歪み、二の
    腕ほどにも成長した線虫が腹の皮膚を破
  る。腹腔は食い荒らされてがらんどうだ。
    線路で卵を吐いていた男だ。
    「わあっ」と声を上げて周りの人垣が崩
  れる。
    「どけっ!」と叫んで自衛隊員が駆けよ
  り、たちまち突撃銃(プルバック式の近
  未来銃)で蜂の巣にする。銃声が響き、
  人々が本当の恐怖に目覚める。
    ひくひくとのたうつ寄生虫。
    婦人が一人そのショックで倒れる。周囲
    の人々の悲鳴で隊員が駆け付ける。

    「そおっと、そおっと」と言いながら婦
  人を横たえると隊員は人工呼吸を初める。
    突然、婦人の腕が隊員を抱きしめる。隊
  員の顔がこわ張り起き上がろうとするが
  できない。
    「うーん、うーん」という隊員の声に驚
  いた別の隊員が駆けつけ二人を引き離す
  と、婦人の口と隊員の口との間に移動中
  の太い線虫がにょろり。二人もろとも射
  殺される。射殺する隊員は口を押さえて
  吐き気をこらえている。

15.管制室
    テロップ「午後4時00分」
    スキャンと解放の進行状況といぶりだし
    抹殺のペースがコンピューターのモニタ
    ーでグラフィック表示されている。
山城「死亡者を全体の*%におさえるための
    シミュレーションを頼む」
    オペレーターがキーボードを叩くと、画
    面がめまぐるしく動く。
    その画面を見て沈痛な表情で、まずいな
  とつぶやき、「フェーズ2に移る」と指
  示。
    テレビの番組では学者の解説が続く。
学者「彼らの寄生方法がまだ乱暴なのは、そ
  れだけ彼らが寄生する宿主を選ばないと
  いうことでもあります。宇宙という過酷
  な環境では、何万年に一度という確率で
  出会うすべての生物に、とりあえずは寄
  生しなければならなかったんでしょう。」

16.地下街
    無人となった地区を3人一組の隊員が巡
    回し、残っている者、略奪、線虫寄生者
    等に備えている。
    彼らが去ると、隠れていた由美が、クリ
    スタル広場に走る。

17.地上
    危険のマークを付けたタンクローリーが
    4台セントラルパークの観光バス専用パ
    ーキングへ入ってくる。
    報道管制がしかれ、追い払われているテ
    レビ中継車。

18.クリスタル広場
    普段は待ち合わせの人々で混雑する広場
  も今は無人。慌てて忘れられたとみえる
  ポーチとかが落ちていたりもする。
    武と由美、ついに出会う。
武  「由美ちゃん」
由美「武」
  抱き合う二人。
    しかし、近づいてくる足音に気づいて壁
  際に走るとトイレに入り、個室に隠れる。
由美「見つかったらすごく怒られちゃうよ」
  武は由美をぎゅっと抱きしめると素早く
  キス。
                            
    足音はトイレの中にまで入ってくる。
    すき間からのぞくと、5人の男女がいた。
    その中には自衛隊員もいる。
    抱き合って息を殺す二人。   
    彼らはトイレの奥にうずくまると大きく
  口を開いた。口から血の混じった唾液が
  だらだらと流れ出すと、太い線虫の一部
  が顔を出し(尻を出しというほうが適当
  か)、吐き出すようにして卵を生み初め
  た。
    ふるえながら息を殺して見つめる二人。

19.セントラルパーク
    タンクローリーからパイプが延び、地下
    街の換気口に入っている。

20.寄生者の去ったトイレ
    床一面にびっしりと産み付けられた卵が
    広がるトイレから、由美と武が脱出を計
  っている。卵は環境に合わせたのか、既
  に岩石のようなものではなく、柔らかそ
  うな白い球体だ。それが呼吸をするよう
  にゆっくりと脈動している。ひびがはい
  って寄生虫の顔を出しかけている物もあ
  る。
    卵を避け、個室の壁に身を寄せるように
  して出口に向かう二人。
    部屋の奥の卵はすでに孵化しかけている。
  (どきどき)

    セントラルパーク地上。
  大きなテントが立っている。立哨の自衛
  隊員の姿。
    テレビ中継のクルーがテントに近づくが、
  警官が飛んでくる。
警官「ここから先はだめだよ」
AD「取材なんですが」
警官「ここから先は虫がいるかもしれないぜ」
  パークに面したビルの壁面のモニターで
  テレビ番組の学者が語る。
    「彼らはとにかく繁殖力旺盛です。二時
  間もあれば二世代ほどすぎますから、そ
  の数は級数的に拡大します」
    取材陣は顔を見合わす肩をすくめて遠ざ
  かる。

    テントの中、防疫服とガスマスクの隊員
  たちが不動の姿勢で立ったまま、指揮官
  の説明を受けている。

    由美の足下の卵か割れる。にょろりと這
  い出す線虫。「きゃ」と叫んで踏みつぶ
  す。次つぎに割れる卵、二人はたまらず
  出口に走る。靴をはい上がる線虫。
    ようやくトイレの外に出た二人は扉を閉
  める。
武  「いてっ」と首筋を押さえ、「わあっ」
  と叫んで半分潜り混みかけた線虫を引っ
  張りだし、床に投げて踏みつぶす。
    由美が跡を見ると血が出ていない。
由美「やけどみたいになってる」
武  「めんどうな出血がおきないような仕組
  みにできてるんだろ」
    そうしてふっと天井を見上げると、トイ
  レのドアの隙間から天井に数匹の線虫が
  這い出している。
    武は慌てて由美の手を引いて駆け出す。

21.検問所
    テロップ「午後6時00分」
    一人の隊員が検問所を通り外へ出ようと
  する。
    別の隊員が「止まれ」と叫ぶ。
    「緊急の命令です」
    「許可証は」とやりあっていると山城が
  出てくる。
山城「どうした」と、不信気にその隊員を見
  る。
    そこへ、武と由美が駆けてくる。一目そ
    の隊員を見て、
武 「そっその人、もう寄生されてます!」 
    その声に寄生された隊員は逃げ出した。
山城「待て、そいつを逃がすな」

  寄生者は止めてあった伝令用のバイクに
  またがると駆け寄った隊員たちの制止を
  振り切って人々の列をかすめながら地下
  街の奥へ。人垣がじゃまになり追う側は
  銃が撃てない。別のバイクが慌てて追い
  かける。
    
山城「隊員の中にまで寄生者が出たか・・・」
    山城は検問所の唯一外部と通じる有線電
  話を取り、「フェイズ3を発動する」と
  告げる。

    地下街の奥。
    追いかけてきた隊員は無人のクリスタル
  広場でバイクを止めた。ここから地下街
  は四方に枝分かれするのだ。
    ふと気づくと、日産のショールームの前
  で車に当たるピンスポットを浴びながら
  寄生された隊員がバイクにまたがったま
  ま腕を組んで彼を待っているではないか。
    「見つけたぞ」とつぶやくと追跡してき
  た隊員は背にした突撃銃を構えた。
被寄生隊員「ふっふっふっ」
  けげんに思って周囲をみると、退路を断
  つようにして、何人もの男女が立ってい
  る。そして一斉ににやりと頬笑むと、舌
  なめずりをするように白い寄生虫が口か
  らのぞく。

    管制室。
山城「そうだ、スタンバイのまま、私の指示
  を待ってくれ。指示はこうだ”バルサン
  を焚いてくれ”以上」

22.地下街各場所
    潜んでいた寄生者たちが姿を現し、沈黙
    のまま検問所へ向かう。中には、体の崩
    れかけた者もいる。まるでゾンビの群れ
  だ。
    地下街のコーナーを回る度に一人二人と
  その人数が増えていく。

    管制室。
武  「四番街の奥のトイレなんです。もう床
  一面卵だらけで・・・」と、地図を指し
  ながら関係者に説明。同時に首の治療を
  受けている。
山城「君は地下街にやけにくわしいんだなあ」
武  「はあ、一応、出入り業者のはしくれで
  すから」と頭をかく。
    由美は、山城の背嚢からガスマスクがの
  ぞいているのを見て、けげんそうに眉を
  ひそめる。

    検問待ちの長い列の最後尾。
    サラリーマンらしい中年たちが、缶ジュ
  ースの空き缶を灰皿にして、たばこを吸
  っている。
  「まだ先は長そうですねえ」
    「さっき見てきた人の話だと、検査がけ
  っこう時間かかるんですよ」
    少し前では、老人二人がノートパソコン
  を挟んでで将棋をしている。
    「ほう、そうきましたか、でもね」とい
  いながらキーをたたいて「ほらっ、桂馬
  の高飛び歩の餌食っと」

中年サラリーマン「ややっ、今頃おでましの
  方たちもいますよ。どうやらどん尻は私
  たちじゃな・・・」と言いかけて口をあ
  んぐり。

    彼方から歩いてくるのは虫に寄生された
  連中だ。
    口と鼻から涎のように液を垂れ流し、服
  の前には吐き出した卵がへばりついたま
  まの者もいる。
    成長した寄生虫の白い体を、くちから舌
  のように垂らしている者、肥大した喉に
  穴をあけて呼吸口としているもの。
    一人の男が崩れ落ちるように倒れる。息
  絶えたのだ。腹部が膨らみ二の腕ほどの
  寄生虫が腹を食い破ってもぞもぞと顔を
  出す。にょろりと這い出ると全長が一メ
  ーターほどの大きさになっている。尾部
  には白い神経繊維の束を引きずり、繊維
  にはネズミ色の脳の一部かまとわりつい
  ている。
    別の宿主が、それをうやうやしく抱き上
  げると、サラリーマンたちに捧げるよう
  に持ち上げ、にっこりと笑った。

サラリーマンたち「ひゃあー」
  腰を抜かしたようにふらつきながら走り
  出す。
  検問待ちの列が崩れ一斉に出口に人が殺
  到。
    パニックとなる。

    逃げ遅れたOLが足をすべらして転倒す
  る。優しく手を引く者があり「すみませ
  ん」と顔をあげるとゾンビである。いき
  なり抱きすくめられ、悲鳴をあげて開い
  た口に接吻をするようにして寄生虫を口
  移しにする。
    自衛隊員達が銃を撃つ。地下街に銃声が
  響きわたる。
    阿鼻叫喚の地獄絵図。

    管制室。
山城「敵の数は、うん、何、隊員の中にも、
  銃を撃ってくるのか、くそう」
    武は、こっそりと壁にかかった鍵を盗み、
  由美の手を引いて奥へ消える。
山城は外部への電話を取り「そろそろバルサ
  ンを焚いてくれ」と告げると悠々とガス
  マスクを着け始める。    

    トンネルの中。
    武と由美が腰をかがめながら進んでいる。
由美「よくこんなとこ知っているわね」
武  「いやしくも我が社の製品が使われてい
  るんだよ。取り付けにも立ち会ったし」
由美「ここ何なの」
武  「配管とかケーブルの検査トンネルさ」
    どこへいくの、という由美の問いに、  
  「いいところがあるんだ。でも僕も行く
  のは初めて」と笑う。

23.セントラルパークの地上
    山城からの電話を受けた隊員がタンクロ
    ーリーのバルブを開く。毒ガスが地下街
    に流れ込んでいく。

24.地下街
    寄生されたものもそうでないものも、ま
  た民間人も自衛隊員も、区別なく倒れて
  いる。
  動くものの影一つない死の世界。
    ガスマスクをつけた山城が一人で立ち尽
    くす。合掌している。

25.久屋大通り地下
    恐ろしく広い屋内プールのような場所。
  天井付近からぼんやりと日光が差し込ん
  で、水面を光らせている。一見鍾乳洞の
  中の様にも見える。
由美「ここは何」
武 「集中豪雨なんかの時にここに雨水を貯
     めて冠水を防いでいるんだよ」
由美「助かったのね」
武 「ああ」

26.地下街
    シャッターが開く。白い防毒服に身を固
    めた隊員達がばらばらと駆け降りていく。
    入れ違いに山城が出てくる。
    手には大きな鞄を下げている。
    地上部隊の無線機を受け取ると、マスク
    を外して連絡を取る。
山城「はい作戦は終了しました。隔離市民の
    犠牲は43%、*****人です」
    地上の指揮官が近寄り握手する。
    「お気持ちお察しします」
山城「彼らは尊い犠牲者です」と言葉少ない。
    山城は無線機を返すと、一人でセントラ
    ルパークの木立の中に入り、ベンチに腰
    を下ろした。
    木立の背後にはビルの壁面の大モニター
  がテレビの番組を映している。番組の中
  では学者が語り続けている。
学者「彼らはいったん宿主を決めてしまうと
  数回の世代交代の間に、どんどん特殊化
  が進むんです。具体的にはどんどん寄生
  の方法がスマートになり、宿主を傷つけ
  ないように学習していくんですね、これ
  はこの・・・」

    山城の顔に広がる奇妙な笑い。咽仏が異
    様に大きくうごめくと、唇の端から白い
    舌のような物がぺろりとのぞく。
    大量の涎が口からあふれ、制服の前を汚
  していく。
    足元の鞄がもぞりと動くと、隙間から孵
    化しかけた卵が地面に落ちた。鞄の中に
  ははち切れんばかりに成長した卵がぎっ
  しりつまっていた。
                            (おわり)
 ●エンドマークがぐにゃりとなって?にな
  ったりすると雰囲気だね。    


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