cinema eye

『つぐみ』

鑑賞日91/10/12(ビデオ)
 CM界の鬼才市川準監督・脚本、牧瀬里穂・中島朋子主演、吉本ばなな原作、という話題豊富な作品『つぐみ』。1990年の映画賞に軒並み入った佳作ですが、今までビデオ化されてから随分日が経つのに見る気が起きませんでした。それは市川準監督の『BU・SU』が力が入り過ぎて退屈だったから、ということと牧瀬里穂の『東京上空いらっしゃいませ』が思ったよりも退屈だったことが、どうしても『つぐみ』に手を伸ばさせなかったのです。

 で、今回は借りたいビデオがいずれも貸しだし中だったことと、中島朋子に免じて(?)借りたのですが、結論から言えば「退屈の一歩手前」。辛うじて「退屈!」と決め付けずにすみましたが、それでも市川監督のテンポは僕にはしっくりきません。

 身体が生まれつき弱い故にエキセントリックな性格になったつぐみと、彼女の従姉妹まりあ。この二人の少女のひと夏の出来事を描いていてなかなかドラマチックな内容なのですが、そこをあえてクライマックスになるようなシーンは見せず淡々と描くだけの市川演出は、はっきり言って映画の面白さを損ねているだけのような気がします。もっと見せるべきところは見せてくれないと、なんのために映像があるのやら、ということになってしまいます。「見せ場」が文字通りない映画なのです。

 そんな中で収穫はやはり中島朋子、そして真田広之。この二人、芸達者なだけに大根の牧瀬の演技をしっかり受けてやっています。中島は『ふたり』でさらにその演技力を確かなものにしましたし、真田は以前からアイドルとの共演が多いだけに、大根との演技はさすが手慣れたもの。ほんと、真田広之は日本のアイドル映画には欠かせませんですねぇ。

 そんなわけで、この映画、アイドル映画とまでは言いませんが、やっぱりそれぞれの役者のファンでないとちょっと辛いかも、という感がしました。これで映画賞取れるようでは、日本の映画界暗いです。

今回の木戸銭…500円